課題

 湿気は苦手だ。
 乾燥や暑さや低気圧や雷や西日や蟻や掃除やミャンマー料理や大晦日や発泡スチロールやその他あらゆるものが苦手だが、とにかく湿気は苦手だ。毎日じめじめしているとだんだん身体からカビが生えるイメージが湧いてくる。外を歩くとき服と身体のあいだが不愉快にべたっとしていると、もうすでに身体にカビが生えていることを確信する。皮膚を熱湯消毒したい。熱風で乾かしたい。カビなどが生えたことのないまっさらな身体に総とっかえしたい。気持ちが追いつめられてくると、浴室の壁にカビが生えているのをみるたびに妙に安心してしまう。カビがわたしの妄想の産物ではないことがわかるからだ。
 人類はどうして湿気を克服できないんだろう?