ミント・ミント

ついにこの日が来てしまった。わたしの家の最寄りにあたるコンビニ、地球上に残された最後のサークルKサンクスであった店舗がファミリーマートに転生していた。ある夜の帰宅途中に気がついた。


その活動はひそやかにしばらく前からはじまっていた。気がついている人も多かったと思う。サークルKサンクスのつもりで入った店内になぜか「ファミリーマート新商品」などのシールがついた商品が置かれている。ぽつりぽつりと増えていく。あれ、わたしはどこに来たんだっけ、と軽く混乱しながら、でも「ライザップ監修!糖質控えめのファミマのチーズケーキ」を買い物かごに入れる。それらははじめは「ちょっと間借りしていますよ」という表情で、でもあきらかに奇妙に、ふてぶてしい存在感をたたえて増殖する。そして、変化はずっとひそやかにつづくわけではなく、ある臨界点を超えた瞬間に止められない加速度がつき、あっという間に店舗の外装が塗り替えられる。外側はいつでもいちばん最後に変わるのだ。気がついたときには何もかもが終わっている。
店名の「ファミリー」やキャッチコピーの「あなたと“コンビ”に」という単語に彼らの戦略はよくあらわれている。わたしたちは仲間だ。同じ種族だ。だから、あなたの顔をしていようがわたしの顔をしていようが、たいした違いはないじゃない?
新しいファミリーマートによってわたしの住んでいる地域全体の空気の組成が変わってしまったことを感じる。そのファミリーマートの気配は、最寄りと言えど数百メートルは離れていて直接は店舗がみえない位置にあるわたしのマンションまでやすやすと届く。空気の入れ替えのためにほそく開けたリビングの窓からあの緑と水色が侵入してくる。ペパーミントとスペアミントの清涼感。わたしはコンビニだとセブンイレブンがいちばん好きです。

 

広告を非表示にする